【刺し方】【図案】青森県刺し子南部菱刺し。「雉子の足」の特徴と構成

菱刺しとは、青森県南部地方に伝わる刺し子技法です。菱刺しには動植物に由来する模様が多くございます。今回は菱刺しを代表する模様のひとつである「雉子の足」の特徴、そして、刺し方と裏の糸処理の仕方について綴ります。図案もございますので、ご一緒に刺してみませんか。

菱刺し「雉子の足」模様

図案

「雉子の足」の図案です。

「雉子の足」は、雉子の足跡を模した、菱刺しを代表する模様のひとつです。

「雉子の足」構成と特徴

「雉子の足」は二辺に並ぶ小さな菱と、そこから出ている線とで構成されています。

菱刺し模様の多くは、上下左右対称のものが多いのですが、「雉子の足」は上下が非対称であり、また、奇数目をあけて刺す、特徴的な模様です。

 

小さな菱の刺し始めと、菱から出る線の始めの部分を濃い青で、奇数目をあける部分を黄色で表しています。

また、緑色の部分は菱の枠「アシガイ」になります。

菱刺しの模様サイズはアシガイを入れずに数えるので、こちらは「横46目×縦23段」と表現されます。

 

説明の為、それぞれ、菱①～⑤、線①～⑤とします。

菱の枠「アシガイ」を入れ、全29段の模様になります。

それでは、刺してゆきましょう。

刺し方

まず、糸は、絡まらない程の長さに切って使用します。

糸が足りなくなりましたらその都度糸かえを行いますので、糸の長さはご自身で調節してくださいね。

また、刺す方向にきまりはございませんが、今回は１段目を左から右に向かって刺します。

２段目は右から左、３段目は左から右・・・と続きます。

 

刺し始まりは、糸の処理を終えるまで、糸の端を表に出しておきます。

このようにすることで、裏面での糸の絡まりを防ぐことができます。

また、途中で糸かえをされる場合も、糸処理を終えるまで、糸の端は表面に出しておいてくださいね。

 

１段目です。

菱の枠「アシガイ」の部分です。

裏面から表面へ向かい針を通し、２目拾い、表面から裏面に向かい針を通します。

 

菱刺しはひと針ひと針刺してゆき、糸こきを行いません。

布が縮まらないように、優しく糸を引いてくださいね。

 

１段目が刺し終わりましたら、次は２段目を刺してゆきます。２段目は右から左へ向かって刺します。

段をうつる時は、布が縮まらないように、折り返しの部分の糸は、余裕を持つ感覚で引いてください。

 

３段目です。３段目は左から右へ向かって刺します。

２目拾い、６目あけ、２目拾います。

 

４段目です。４段目は右から左へ向かって刺します。

ここから模様が始まります。

２目拾い、４目あけ、２目拾い、４目あけ、２目拾います。

 

５段目（模様の２段目）です。左から右へ向かって刺します。

模様の２段目は、６目拾います。

 

糸を引くとこのようになります。

 

５段目が完成しました。

 

６段目（模様の３段目）です。右から左へ向かって刺します。

模様の３段目は４目拾います。

 

糸を引くとこのようになります。

 

６段目が完成するとこのようになります。

 

７段目です。左から右へ向かって刺します。

 

８段目です。右から左に向かって刺します。

菱③が始まります。

 

菱②も始まります。

 

８段目が刺し終わるとこのようになります。

 

９段目です。左から右に向かって刺します。

 

10段目です。右から左に向かって刺します。

菱①が刺し終わりました。

 

11段目を刺し終え、12段目では、菱⑤が刺し始まります。

 

12段目では、線①も始まります。

 

菱④も始まります。

 

12段目まで刺し終えますとこのようになります。

13段目は左から右へ向かい、14段目は右から左へ向かって刺します。

 

刺し連ねてゆき、15段目まで刺し終わるとこのようになります。

半分まで刺し終わりました。

 

16段目です。右から左へ向かって刺します。

線③が始まります。

 

線②も始まります。

 

16段目を刺し終えますとこのようになります。

 

17段目です。左から右へ向かって刺します。

５目あけ、２目拾います。

菱刺しでは主に、「偶数目を拾い、偶数目をあけて」刺しますが、「雉子の足」は「奇数目をあけて」刺す部分もある模様です。

 

もう一度、５目あけ、２目拾います。

 

右側も同じように刺しますと、17段目が刺し終わります。

 

18段目は「偶数目を拾い、偶数目をあけて」刺します。

 

19段目です。19段目は左から右へ向かて刺します。

線④がはじまります。

 

19段目は「奇数目をあけて」刺す部分がありますので、お気を付けくださいね。

７目あけて、２目拾います。

 

３目あけて、２目拾います。

 

19段目では、線⑤も始まります。

右側も同じように刺します。

 

20段目です。右から左へ向かって刺します。

 

21段目です。左から右へ向かって刺します。

21段目は、５目あける部分と１目あける部分（奇数目をあけて刺す部分）
があります。

22段以降は奇数目をあけて刺す部分はございませんので、図案の通り刺してみてくださいね。

 

26段目まで刺し終えますとこのようになります。

模様の部分が刺し終わりました。

 

残りの菱の枠の部分も刺しますと、全29段刺し終わりました。

刺し終わりの糸の端も表面に出しておいてくださいね。

 

裏面です。

表面と裏面は逆さ模様となっています。表面の糸の部分が裏面の布の部分、表面の布の部分が裏面の糸の部分となります。

菱刺しでは表面同様、裏面も大切に刺します。裏面には表面とはまた違う模様の美しさがございますよね。菱刺しの面白さのひとつです。

それでは、裏面で糸の処理を行ってゆきます。

裏面での糸の処理

菱刺しの糸の処理は、玉止めではなく、処理をした糸が表面から見えないように、表面の糸が刺されている部分の裏面の布の目をすくって行います。

刺し始めや刺し終わりの部分は、一段下（上）の布の目をすくうと処理がしやすいかと思いますが、今回は菱の枠の形の関係で、もう少し下の段の目をすくいました。近い所のすくいやすい部分の布の目をすくってくださいね。

 

布が縮まらないように、優しく糸を引き抜きます。

 

糸の処理は、刺し始め、刺し終わり、糸かえを行った部分でそれぞれ行います。

今回は途中で一度糸かえを行いましたので、全部で４ヶ所の糸処理を行いました。

糸かえを行った部分は、横の目をすくうと処理しやすいです。

 

糸処理を終えましたら完成です。

お疲れさまでした。

おわりに

いかがでしたでしょうか。

「雉子の足」は、小さな菱が並び、そこから線がのび、上下非対称で、奇数目をあけて刺す部分もあるという、実に個性的な模様であり、慣れるまでは難しさを感じられるかもしれません。実際私がそうでした。

しかし、それだけ印象的で華やかな模様ではないでしょうか。

今回の「雉子の足」はサイズも大きめで、菱刺しらしさを感じていただける模様なのではないかと思います。

楽しむことが一番ですので、是非刺してみてくださいね。

お付き合いくださいましてありがとうございました。